新時代ボイトレ概論 第六回 ボイストレーナーは嘘をつく(6)

ごあいさつ

こんにちは。音楽家になりたい人・武宮健です。

新時代ボイトレ概論は、従来の「上手い人がより上手くなることしかできない」ボイストレーニングに異を唱えて、誰もが上手くなれる、新しい歌の理論体系を築き上げるための講義です。

今回は「旧時代ボイトレ」最大の嘘「ミックスボイス」についてお話していきます。

ミックスボイスの定義?

まずは、Wikipediaでミックスボイスの定義を見てみます。

”ミックスボイス (mixed voice) は、発声技法のひとつであり、発声や歌唱の様式を表す。”

“「声区の融合」を意味しており、現在では主に(ファルセットでない声という意味での)胸声区で高い音を出すための技術として捉えられている。”

ここまででわかるのは、裏声じゃなくて地声で高い音を出す「ための」技術ということ。

「ための」ですからまだ本質はわかってません。続きを。

“ミックスボイスには、大別して二つの意味がある。”

“1. 特に高い声を出すときに意識的に呼気を多くする、又は声門の閉鎖を弱めた柔らかい声で(時に息を混ぜ気味にすることで)換声点(声区の変わり目)を滑らかに通過するスタイル。またそれにより得られる声色。”

難しくなってきましたが、これは森山直太朗さんがとってもわかりやすいと思います。

是非一度、地声なのか裏声なのかって考えながらずっと聞いてみてください。

すると、どっちとも取れない、「息が多い高めの声」が出てきます。それが一つ目のミックスボイス。

“2. 頭声を駆使して高音域を地声のように出すこと。またそれにより得られる声色。主に男性の唱者についていわれる。”

これって意味のない定義ですよね。

地声のように高い声を出すこと。

定義としてそれしかないのです。「地声のように高い声を出す」以外の要素は誰でも勝手に決めてしまっていい状況なのです。

ミックスボイスは無意味な言葉

つまるところ、ミックスボイスはただの普通の高い声なのです。

それを言い換えただけの言葉になってるのです。

「高い声を出したい」という目的を「ミックスボイス」という技が叶えるのではなく、「高い声=ミックスボイス」なのです。

ミックスボイスは意味のない言葉なのです。

これが「ミックスボイスは死語になる」と言っている理由です。

言葉の魔力

「プロの歌手はみんなミックスボイスを使っている」

そう聞くと「なんだか凄そうだから習得してみたいなぁ」って思ってしまう。ミックスボイスにはそういう魔力があるようです。

でも実際は「プロの歌手はみんな高い声を出している」という意味でしかありません。

ただの高い声そのものなのに、それを手に入れるための必殺武器のように言われるミックスボイス。

この言葉が私達のボイストレーニングをめちゃくちゃにかき乱しているのです。

そして振り出しに戻る

ミックスボイスとは、高い声の言い換えである。それを踏まえると振り出しに戻ってしまいます。

高い声は最初から出る人と最初から出ない人がいる。

結局、もともと歌える・歌えないの壁の越え方はわからずじまい。

ボイストレーナーは「ミックスボイス」という凄そうな技を持ってきて、「身につけるためにはこんな練習法があるよ!」と言って、声楽インスパイアの沼に引き込もうとする。

でも、ちょっと待てよ。

最初から高い声が出る人って何なんですか?

高い声が出る人と出ない人の違いを説明できますか?

その練習は、高い声が出る人と出ない人とのギャップを埋めるのに役立つんですか?

という疑問が湧くべきなのに、やはり「ミックスボイス」という言葉に惑わされてしまう。

改めて目的は「普通の高い声」

色々話してきましたが、目的としてまず普通に、自由に、高い声が出せるようになりたい

もちろん、「綺麗な高い声」「耳障りな高い声」というのはあるでしょう。

でもとにかくまずは普通に高い声を出せるようになること

それが「自由な歌」に直結するのです。

私たちは、ただ真っ直ぐ「普通の高い声」を目指して練習をすればよいのです。

おわりに

ミックスボイスはただの言葉です。

高い声を出すための伝説の武器ではありません。

高い声を出せるようになるには、「高い声はもともと出るもの」という現実にきちんと向き合って、体ごと変えていく方針をとらなくてはいけません。