はじめに
どうも。ビートルズも歌えなかった男、武宮健です。歌声の真理にたどり着き、枯れない声を手に入れた稀有な存在として、責任を持って生きさせていただいています。
今回はflumpoolのボーカル山村隆太さんが歌えなくなった理由を考察していきます。山村氏は2017年に「機能性発声障害」で歌えなくなり、1年以上の活動休止を経て活動再開したという経緯があります。
まとめ
もういきなりまとめを貼っておきます。
- flumpoolの山村氏は歌が下手になってしまった。
- 原因の「機能性発声障害」は意味のない言葉。
- 本当の原因は「風邪からの慢性副鼻腔炎」で決まり。
- 改善するには鼻腔・副鼻腔のケアが必要である。
- おまけ:ボイストレーナーは嘘をつくけど、医者は嘘つかない。
歌が下手になっている
まずこちらの曲(TVアニメ『かくしごと』OP主題歌『ちいさな日々』)を聴いていただきたいです。
「昔flumpoolの曲を聴いていたよ!」という方は驚かれるのではないでしょうか。だって、flumpoolといえば、この『君に届け』のような「爽やかな抜けと温かみのある声」というイメージではなかったですか。まるで別人だ。
どう違う?
『君に届け』と比べて『ちいさな日々』は、主にこのような違いがあります。
- 最高音が下がった(midG#→midF#)
- 全体的に声が重くなった
- マ行などの発音が苦しくなった(「き”み”がねがう」など)
- 音抜けの悪さを補うために身体に力が入っている
- 「声の重心」が落ちやすくなっている(「はるはや”ってくる”」あたり)
- ピッチ補正が目立つ
歌に精通していない人からしても、聴いた印象で全体的に声が出しづらくなっていそうなのは明らかではないでしょうか。「声の重心」については後述します。
原因は「年齢」ではなく「鼻」だ
確かに『君に届け』は2010年、『ちいさな日々』は2020年。「10年経てば声も変わるかー」と思ってしまいそう。しかし、あなたの知っている多くの歌手の声を思い返してみてください。10年経ってもそこまで大きく変わっていませんよね。そして、どちらかといういうと「今の方が深みがあるなぁ」とかポジティブな印象のはず。
では、この声の悪化は何が原因か。というと「鼻」なわけです。
新ボの理論は無敵だ
武宮は令和元年末に「新時代ボイトレ概論」を公開しました。そこでは「歌えない人(=歌の才能がない人)は、鼻腔・副鼻腔の状態が悪く、それらを響かせる能力に乏しい」という主張のもとで現代のボイストレーニングを批判しています。
声の響きを「上(鼻腔・副鼻腔)」と「下(口・喉)」に分けて考え、歌の才能がある人は「上」がよく響いているという、ただそれだけの超簡単な理屈です。
これに基づいて考えると、山村氏の歌も矛盾なく解釈できるわけです。ストーリーはこんな具合です。
以前の山村氏は、鼻腔・副鼻腔の状態がよく、発声も「上」を使って歌えていた。しかし、あるきっかけで鼻腔・副鼻腔の状態が悪化して「上」を使いにくくなった。そのため「下(口・喉)」を使うことが増えた結果、歌の才能を失っていった。
「声の重心が下がる」って何?
「上(鼻など)」の発声だと声の重心が高い。「下(口など)」の発声だと声の重心が低い。「声の重心が下がる」というのは、「下」がより多く響いているということです。そうなると、高音が出にくく、ピッチが下がり、息漏れが増え、声が通りにくくなり、喉へのダメージが増えます。
歌が上手い人は常に「上」で歌っているから、長時間のライブでも歌い続けられるのです。一方、メロディの上下によって声の重心が揺れると、まず音程が狂います(→ピッチ補正)。そして「下」から「上」に持ち上げるときに苦しさが生じ、枯れやすくなる。例えば、「はるはやってく”る”」と伸ばすところは、声の重心を持ち上げきれなかった部分としてわかりやすいです。
山村氏は、もともと歌える人なので「上」を使うべきだと本能的にわかっています。でも、状態悪化のため声が抜けなくなってしまった。だから身体に力を入れて補うことなります。
また、それだと疲労が激しいので「下」の発声に逃げて楽をしなくてはつらい。その結果、声が重くなったり、音域が狭まったりしているのです。マ行の発音はわかりやすく鼻の詰まりですね(どちらかというと副鼻腔の詰まりです:呼吸はできるけど発声に問題が生じる)。
ひとまず、悪化した声の解釈はできたかなと思います。ロンパァー!(「ボイストレーナー大論破祭り」)。
「機能性発声障害」って何?
山村氏が歌えなくなった原因は「機能性発声障害」だそうです。この曖昧な病気について書いておきましょう。こちらの記事から引っ張ってきました。
「機能性発声障害」は、声帯や喉頭などに異常がないのにもかかわらず、発声が思うようにうまくいかなかったり、発声時に痛みを伴ったりするといった症状が出る発声障害。3種類に分類されています。
- 「筋緊張性発声障害」発声時の筋肉の使い方に問題がある
- 「変声障害」変声期が過ぎても変声期前の高さの声を出そうとしてしまう
- 「心因性発声障害」心理的な要因から突然声が出なくなる
つまるところ、名前をつけているだけで無意味なんですよね。「高い声」に「ミックスボイス」と名付けているのと同様、「なぜか声が出ない」に「機能性発声障害」と名付けているだけで何も解決しないのです。言ってみればそれって、歌が下手な全員が感じてる症状じゃないのか。
記事には、「2017年12月3日の横浜公演後に医師の診察を受けて『歌唱時機能性発声障害』であることが明らかになった」とあります。これはただ医師に「あなたは声が出ませんね」と宣言されただけなのです。悲しい。世の中のボイトレは嘘だらけだけど、医者は嘘をつかないから、原因がわからないことをただ認めたのです。ちなみに耳鼻科に行っても気休めの薬とかを渡されるのが関の山。
結局のところ「鼻」なんだ
こちらのインタビュー記事からの抜粋です。
「もう3年前くらいから、ずっと調子は良くなかったんです。それまではなんだかんだ言って、声と喉には自信があった。それがベストアルバムのツアー(註:2014年)で風邪をひいて、調子を崩してから、毎回波があるようになって、だんだん思うように唄えなくなってきたんですよね」
ビンゴでしたね。風邪→鼻→慢性副鼻腔炎で決まりです。ここまで「鼻」で考えてきて矛盾する点はありませんね?
どうすればいいんだろう
山村氏が行うべきは、鼻腔・副鼻腔のケア。ただそれだけです。もともとあんなに爽やかに歌える人なのだから、歌い方には「良い癖」を持っているはず。だから悪い癖がつく前に、ただ鼻腔・副鼻腔を元通りの響きやすい状態にすればすぐに歌えるようになるでしょう。
そのへんの内容は「新時代ボイトレ概論」の終盤で話しているので、興味のある方はのぞいてみてください。みんな鼻うがいしよう。
まとめ
- flumpoolの山村氏は歌が下手になってしまった。
- 原因の「機能性発声障害」は意味のない言葉。
- 本当の原因は「風邪からの慢性副鼻腔炎」で決まり。
- 改善するには鼻腔・副鼻腔のケアが必要である。
- おまけ:ボイストレーナーは嘘をつくけど、医者は嘘つかない。
謎が解けて気持ちいいですね。flumpoolは学生時代に流行っていたのでまた一層元気を取り戻して頑張ってほしいです。関係者の方は、山村さんに鼻うがいをすすめて差し上げてください。
☆意見や反論などがあれば随時募集してます。令和ボイトレのツイッター(@reiwavoitre)へのリプなどでください。攻撃的な内容はブロックします。
それでは、武宮健でした。